書籍「リアル・キューバ音楽」


この本はキューバ音楽の解説本ではありません。副題で「キューバ人が教える人生の楽しみ方」とあるように、本書を読むことによって「キューバ的人生の送り方のススメ」とはどのようなことなのか徐々にわかってきます。

著者はペドロ・パージェ。彼はキューバ音楽界では有名な方で現在は日本在住なのだとか。その彼の半生がキューバという社会主義国家の歩みと共に丁寧に語られています。最近ではマイケル・ムーア監督の「シッコ」でキューバが大変な医療大国であることが知らされるなど、ようやく「社会主義国家=悪」ではないという情報が出始めていますが、本書では特にキューバについて何の知識もお持ちでない、キューバ未経験の方に是非オススメしたい1冊です。

まず、本のタイトルが「リアル・キューバ音楽」なので音楽解説に言及したものかとつい勘ぐってしまいがちですが、さにあらず。音楽だけに限らずここに語られているキューバはまさにリアル。革命後、「医療と教育を全ての人に」という理想を掲げ国づくりをしようとしたときにキューバは社会主義というスタイルをとらざるを得なかったわけです。そんな中でペドロの進んだ「音楽」の道は大変恵まれた環境でした。ペドロの歩んできた道はまさに激動のキューバ史と重ねあわされるのです。

読後に、キューバの根幹である「医療と教育を全ての人に」という考えは我々の住む日本でも可能ではないかと、思えるようになりました。社会主義国家から資本主義のいいところを取り入れて模索するキューバ。ならば資本主義国家の日本は資本主義から社会主義のいいところを取り入れて模索してはどうでしょうか。本当に「世の中、金じゃない」と言えるなら、そんなことをもう少し真剣に考えてもいいのかなぁ、と思うのです。

高校の授業無料化とか子供手当てとか言えるのなら、いっそ「教育無料化」では駄目なのでしょうか。まぁ、なにせ色々と考えさせられる本ではあります。もちろん、キューバ音楽に関する記述も盛りだくさんですから、キューバ音楽について知りたい人にもバッチリです。キューバのことを紹介した本はそこそこありますが、本書は中でも「リアル」に面白い一冊です。